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フラッシュクラッシュと日本の追証制度
更新日 2019年12月26日

2019年1月3日、為替相場の突発的変動であるフラッシュクラッシュが発生した。米ドル円相場は、108円台から104円台へドルが急激に下落した後、すぐに反転し、何もなかったかの様に元の値段へ戻っていく。

翌月11日には、スイスフランのフラッシュクラッシュが発生している。

一般社団法人金融先物取引業協会の集計によると、19年1月3日のフラッシュクラッシュは、同協会所属金融機関を利用した取引において、ロスカット等未収金を6,598件、9億4,300万円発生させた。

ロスカット等未収金とは、「顧客が会員(取引業者)に支払わなければならない金銭の内、顧客の取引がロスカット取引により決済された時の損失が、当該顧客が預託する証拠金額を上回る事により発生するもの」を指す。*1 いわゆる追証の事だ。顧客保護より業界保護を重視した日本特有の制度である。

日本のFX会社を利用している人達が、フラッシュクラッシュによる損失で、数百万円の追証を請求されたという話をよく聞く。

「外国為替業界全体で取引が自動マッチング化した事により、値動きが多く、激しくなっており、今後も、フラッシュクラッシュが起きるリスクは極めて高い。ミニクラッシュなら、2週間に1度は発生している。今や、為替取引の大半は、コンピューターシステムのアルゴリズムによって行われているが、取引量の激減や通貨の乱高下といった市況の急変が起きると、アルゴリズムは取引を停止する場合が多い。この停止が広がると取引量は急速に低下し、相場の変動幅がより大きくなってフラッシュクラッシュをもたらすのだ。システム取引は、これから、さらに市場を支配していくだろう」 19年5月30日のロイター記事を要約した。

外国為替業界のシステム取引は、今後、世界中に普及していくため、ミニクラッシュの発生頻度は増え、規模のより大きなフラッシュクラッシュが発生するだろう。フラッシュクラッシュは流動性の低下を起因として発生する。主要国の祝日や年末年始以外にも、米国の株式市場終了後、日本の株式市場が開始するまでの時間は外為取引の流動性が低くなる。景気の動向など、相場が不安を抱えている時も要注意だ。

レバレッジを25倍以内としている日本のFX会社利用者には、1つのFX口座に集約してたくさんのお金を預け、低いレバレッジで結果が出ないまま、数週間同じポジションを持ち続けるという人も多い。これは、時期によっては、フラッシュクラッシュに遭遇するリスクを高めている。長期で同じポジションを持つ場合でも、ミニクラッシュ対策として、常にチャートを監視していたいが、現実として不可能である。

結局、フラッシュクラッシュのリスクを避けるため、追証がなく、高いレバレッジで1口座あたり投資資金を低く抑え、短いスパンで結果を出せる海外FXの利用が有効だと言える。相場に合わせた実効レバレッジで取引すれば、海外FXの効力を最大限発揮できる。

投資の世界の自動システム化は、新たなリスクを生み出している。我々トレーダーは、リスクを避け、そして、リスクをチャンスに変えていきたい。

*1 株式会社外為どっとコム総合研究所(2019) 「外為白書2018-19(第10号)」 p.91

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