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世界の外国為替取引
更新日 2019年11月22日

第1次世界大戦(1914-18)敗戦国ドイツの賠償金支払遅延問題を打開する目的で、世界恐慌期の1930年、中立国スイスのバーゼルに設立された国際決済銀行(Bank for International Settlements、BIS)は、32年にその請求権を放棄した後、各国中央銀行間の決済・連携機関として発展していく。

世界GDPの約95%を占める60ヶ国・地域の中央銀行加盟に至ったBISは、「中央銀行の銀行」と呼ばれる様になる。

BISは3年ごとに外国為替取引の調査を行っている。この調査の2019年版「Triennial Central Bank Survey」(以下、BIS調査と呼ぶ)によると、世界の外国為替総取引高は、3年前に比べ1.5兆米ドル増え、6.6兆米ドルとなった。

通貨別取引高シェア1位は米ドルの44.2%、2位はユーロで16.2%、3位が円の8.4%、4位ポンド6.4%、5位豪ドル3.4%、6位加ドル2.5%と続く。以上の6通貨で市場取引の8割を超える。7位はスイスフラン2.5%、8位人民元2.2%となっている。

BIS調査の国・地域別外為取引高シェアでは、1位が英国43.1%、2位米国16.5%、3位シンガポール7.6%、4位香港7.6%、5位日本4.5%、6位スイス3.3%となり、これら6ヶ国・地域で市場取引の8割を超える。7位はフランス2.0%、8位中国1.6%である。

円は、米ドル、ユーロに次ぐ取引高通貨だが、国・地域別外為取引高では、日本の上位にシンガポールと香港がランクインしている。所得税が日本より安く、住民税・相続税・キャピタルゲイン税においては0という、シンガポール・香港の特殊税制が金融業を発展させた結果だ。

英国が17世紀からの植民地政策で築いたネットワークにより、ポンドは世界の基軸通貨として君臨したが、第2次世界大戦(1939-45)期にその政策が崩壊、1944年のブレトンウッズ体制以後は米ドルが基軸通貨となる。しかし、英国の資本主義金融ネットワークは今も健在で、国・地域別外為取引高シェア1位がこれを物語る。

欧州通貨では、ユーロ、ポンドに次いで3番目にスイスフラン、欧州の国・地域別では、英国に続く2番目にスイスが登場する。中立国として政治面で安定し、「世界の富裕層の金庫」としての地位を確立したスイスでは、資産運用も活発である。

世界の代表的通貨となるには、国・地域において、経済力が大きく、政治面で安定し、国外からの信用度が高い事が要件となる。そして、外国為替は一日中取引されるため、事実上、代表的な国・地域で24時間マーケットを分担している。それが、欧州・米国・日本になる。

BIS調査を見て気になる存在がある。通貨別シェア8位の人民元、および、国・地域別シェア8位の中国だ。

中国は、国内総生産(GDP)が米国に次ぐ2位で、経済大国へ成長した。しかし、中国の1人あたりGDPは、日本の4分の1以下であり、国内の経済格差が著しい。多民族国家で一党独裁政治に対する不満など、毎年、10万件以上の暴動が発生している。香港の民主化デモは、その氷山の一角にすぎない。経済において、政府黙認の模倣品製造は、中国の重要な産業となっている。

中国の経済力は大きくなったが、国内での矛盾も大きくなっている。「政治面で安定し、国外からの信用度が高い」とは言えない。ただし、日本も、投資を増やすための税制改革など、経済立国としての政策推進が不可欠だ。

いずれにしても、日本の存在なくして、世界の外国為替取引は成り立たない。ユーロ・米ドル・円は、今後も3大通貨として、世界経済を支えていくだろう。

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